私は天使なんかじゃない







疑惑と混乱





  疑心暗鬼は広がっていく。
  少しずつ侵食するように。

  そしてキャピタル・ウェイストランドを覆い尽くすだろう。






  血反吐を吐いて転がるグール達。
  グレタ曰く、アンダーワールドの住人ではない連中。
  グリフォンがしていた楽しい催しは中断され誰もが混乱と戸惑いを感じといる。
  俺もだ。
  一体全体何なんだ?
  口から噴き出した血と転がるペットボトルから床に広がっていく水とが混ざり合う。
  「どいてくれ」
  ビリーが群衆をかき分けて死体の側に駆け寄る。
  横に立ってたグレタを残して俺も行く。
  壇上でグリフォンが叫んだ。
  「今日のところはこれにて終了だっ! ナインスサークルで一杯やっててくれ。クロウリーに私のツケにしておいてくれと言っといてくれっ! お前たちも下がっていい。ご苦労様、一杯やって来い」
  群衆に、助手の3人にグリフォンは言った。
  そうだな。
  変にごみごみしている必要もないな。
  ライリーさんとフォークスもこっちに駆け寄ってくる。
  俺たちは倒れているクールを見下ろす。
  脈をとるまでもない。
  死んでる。
  ビリーは落ちている、中身がほとんど残っていないペットボトルを慎重に手に取り、まじまじと見る。
  「なあ、ビリー、毒入りってことか?」
  「何とも言えんな」
  「グレタ、俺たちの宿の食事担当の彼女が言ってたんだが、こいつらは街の住人ではないらしいぜ」
  「……」
  「疑うなら聞いてくれ。……あー、彼女も酒場に行ったらしいけどよ、後で……」
  「……」
  「ビリー?」
  「想定と違い過ぎる。毒だと? やれやれ、何やら面倒な展開になって来たな」
  「だな」
  ビリーの任務は水の運搬量の調査。
  アンダーワールドにも給水隊は来ているはずなのだが、クロウリーが言うには来ていないらしい。ここには一泊二日の滞在だが誰もがアクアピューラなんて知らないと答えてた。
  嘘?
  嘘吐く必要はないだろ、別に。
  誰かが横流ししている線もなさそうだ、純粋に来ていない可能性の方が高い。インチキ商売をお祭り騒ぎで住民総出で楽しんでるんだ、横流ししてキャップ稼ぐ必要はあるまいよ。
  ここは金に困ってない街だ。
  「下手に触らん方がいいと思うぞ。私も毒に詳しいわけではないが皮膚から浸透する可能性も捨てきれない」
  フォークスの言葉を肯定しているからだろう、ビリーは慎重にペットボトルを触ってる。
  懐からメモ帳を取り出しビリーはラベルと照合し始めた。
  何やってんだ?
  「ビリー、その、何してるんだ?」
  「ラベルにはBOSが浄水した年月日、リベットシティが出荷した年月日が記載されている。あと、どこの場所に出荷したのかが数字と記号で記されてる。何も知らずに見るとただの記号と
  数字の羅列だが、今、照合してる。くそ、こいつはビッグタウンに向けて出荷された水だ。向こうも水が届いていないという苦情が来てた」
  「どういうことだよ、こいつら何なんだよ?」
  「知らねぇよ」
  突き放したようにビリーは吐き捨てた。
  想定してないのだろう。
  そりゃそうだ。
  ただ単に金目当ての横流し、権力大好きだぜなリベットシティが水の供給量を操作している、という前提で動いてた。当然それ以上のことなんて考えてなかった。
  「何かお手伝いできることはあるかな」
  詐欺師のグリフォンが声を掛けてくる。
  グレタにも言ったことをこいつにも聞いてみる。
  「なあ、こいつら見た顔か?」
  「知らんよ」
  「即答かよ」
  「即答だよ。ここは街というより家族の家なんだ。私たちはずっと寄り添って生きている。余所者は見れば分かる。……あー、君達には見分けがつかないのか、とはいえこいつらは結構悪い
  顔をしているよ。ここまで悪人はこの街にはいない。小狡い奴はいたけどね、アズクハルとか。いても私のような詐欺師までだ、こいつらは無差別殺人も辞さない顔をしているよ」
  「そっか。なんだ、その、悪気はなかったんだ、すまん」
  「気にするな。それでー……死因は毒なのか? だとしたら何だってこいつらは服毒自殺しているんだ? 我々の街の中で、何たっていきなり死ぬんだ?」
  「あっ」
  思わず俺は声を出す。
  声こそ出さなかったが全員が同じ疑問が顔に出ていた。盲点を突かれたぜ。こいつら何だってここでいきなり死んだんだ?
  「そうだぜ、ビリー、こいつらいきなり何で自殺してんだ?」
  「分からんが……なあ、あんた、医者はいるのか?」
  「Dr.チョッパーがいる。呼んで来よう」
  「頼む」
  ビリーの要請でグリフォンが奥に消える。
  何かを考えながらずっと黙ってたライリーさんが口を開く。
  「傭兵仲間から聞いたんだけど、1本100キャップでアクアピューラを買い取ってるグールがいるんだって、聞いたわ。レイダー内では評判でそこらで略奪が起きてる」
  「100キャップ? ……大金だな」
  外の世界の通貨の価値はいまだに分からん。
  高いのか。
  「俺こいつらから買ったけど50キャップだったぜ」
  飲みかけのペットボトルを見せる。
  買い取りの半額だ。
  もちろんこいつらが100キャップで買い取っているかは知らん。件の連中がこいつらだとしても半額で売る意味が分からない、普通に大損だ。
  それとも俺に最初に売ったのはデモンストレーション的な意味で安かったのか?
  あー、いや、それでも大損だ。
  デモンストレーションにしたって買値の半額はないだろ。当然売値はさらに跳ね上がるわけだし、あんなにこそこそ売るのではデモンストレーションの意味はない。
  となるとこいつらは何だ?
  分かるのは不正売買ってことだけだ。
  「ライリーさん、アクアピューラに100キャップの価値はあるのかい?」
  「ないわね。半値でも高過ぎる。こいつら何者かしら」
  横流し犯ってわけではなさそうだ。
  アンダーワールドの連中ではないらしいし他のグールの集落からここまで売りに来たのか?
  「なあ、ビリー、他のグールの街からの……」
  「それはないな。グールの街へのアクアピューラはアンダーワールドだけにしか供給されていない。少なくとも、リベットの運搬記録と計画では、そうなってる」
  「そうか」
  「それよりもブッチ、お前、飲んだのか?」
  「うまかった」
  「生きてるよな?」
  「生きてる」
  「馬鹿かお前はっ! 毒だったらどうするっ!」
  「無茶苦茶言うなよビリー、あの時点で毒だなんて知らな……そ、そうだぜ、俺……生きてるよな? なっ、フォークス?」
  「生きている。しかし不思議だな。ブッチ、君が飲んでいる水は毒なしの外れ、いや、この場合は当たりという表現になるのか? しかし、余計に分からんな、こいつらは何だったんだ?」
  「もしかしたら知らなかったんじゃないかしら? 毒入りだって」
  「……にしても謎が深まった。やれやれ、こいつは一気にレギュレーター向けの案件になって来たな。無差別テロか。そのまま俺が受け持つのは勘弁してほしい。マギーとの団欒が……」
  「マギー? ああ、あんたの娘か。元気かい?」
  「ああっ! あの子は旅立つ前も俺をけなげに見送ってくれたんだぜ、無理して笑顔を浮かべてなっ! 聞きたいかっ!」
  「い、いや、今はいいや」
  「そうか、聞きたくなったら言ってくれ。それにしても面倒な展開だ。ここでわざわざ自殺する必要がないからこいつらは毒入りだとは知らなかったんだろうな。となるとビッグタウン行きの
  給水隊をこいつらが襲って強奪したのか。だが自殺する意味がない、だとすると、最初から毒入りだったのかもな」
  「ビッグタウン?とかいう街を皆殺しにする為にかよ?」
  「かもな。情報がなさすぎる、全部憶測だが、厄介だよ。……やれやれ、ミスティがいなくてよかった。さすがに水絡みでの厄介は、あいつにはきつ過ぎるだろ?」
  「ああ。俺もそう思うぜ」
  とりあえず俺は生きている。
  毒なしなのか?
  それともじわじわ死んでいくのか?
  ……。
  ……やばい、吐き気がしてきた。
  死にたくねぇ(泣)
  「そういえば普通に会話してたが挨拶がまだだったな。ビリー・クリールだ」
  「私はフォークスだ。よろしく」
  「ライリーよ」
  「ライリー? まさかライリー・レンジャーのライリーか? ……さっきの、その、舞台での演技は一体なんだったんだ? バイト?」
  確かに俺も気になってた。
  彼女は肩を竦める。
  「お遊びに付き合ったら酒を奢るってグリフォンに誘われたから断れなくてね。ただ酒を断るのって人生損するじゃない?」
  「ははは。確かにな」
  「この後にBOSからの仕事を片付けなきゃいけなかったし景気付に飲みたかったのよ。ただ酒をね。私たちライリー・レンジャーは地図作りをしてる。今まではスーパーミュータント、
  タロン社がDC残骸でところどころ戦争してたから手付かずだった場所が沢山ある。今から行くタコマ地区もその一つ。フォークスも手伝ってくれるから心強いわ」
  「助け合うのが仲間だから当然だよ」
  ははは。
  何というかエンクレイブとの戦いで手を組んで以来、すっかり仲間になっているようだ。
  ライリーは感慨深く呟く。
  「不思議ね。まさかスーパーミュータントが仲間になるなんて考えてもみなかった。……変な意味じゃないの、フォークス、気に障ったらごめんなさい」
  「構わない。私もボルト87の独房から抜け出し、ヒューマンと仲間になるとは思ってなかったからな。繋げてくれた人に感謝だな」
  「ミスティ、か。不思議な子よね」
  趣旨がずれてきているような気がするが、優等生が穴蔵から這い出してきて世界は変わりつつあるようだ。
  俺は思う。
  例え優等生が外に出なくてもエンクレイブ到来は普通にあった。
  そして何事もなく、あいつとあいつの親父さんが今もボルトにいたらとしたら、エンクレイブ到来後の世界はどうなっていたんだろう?
  スーパーウルトラマーケットの虐殺何たらはずっとそこの大将でいたんだろうか?
  それとも何だかんだでボルトに突撃してきた?
  ……。
  ……いずれにしても、あの時優等生が戻って来てなかったら俺たちはとっくに死んでる。
  巡り合わせってすごいよな。
  しみじみだぜ。
  「ブッチ、聞いてくれ」
  「何だい、ビリー?」
  「こいつらのこの水を持って、お前さんの飲みかけも持って、そのままジェファーソン記念館に行ってくれないか。こいつをBOSに検査して貰わないといけない。連中に無線で報告はしておく」
  「そりゃ構わないが要塞じゃないのか? 記念館に行くのか?」
  「精製の責任者が記念館にいる。Dr.ピン……何とかだ。直接そっちに行った方が早い」
  「ビリーはどうするんだ?」
  「俺はメガトンに戻る。思ってたよりも、そう、最悪なまでに嫌な展開になってきた。こいつは多分レギュレーターの案件になる。ソノラに報告もしなきゃならん」
  「分かった」
  「頼む。ライリー・レンジャーを雇うことは……」
  「ごめんなさい先約がある。BOSに今は雇われてて、タコマ・インダストリィを調べなきゃいけないのよ。タロン社の残党が頻繁に出入りしてドラム缶を運び出してるとか何とか。前提としては
  地図作りだけど戦闘もあり得る。悪いけどそっちに割ける人数はないわ」
  「いやいや構わんよ、無理を言うつもりはない。じゃあブッチ、すまんが頼むぜ。……妙な展開だ、気をつけろ」
  「ああ。そっちもな」





  事件発生から3日後。
  ギャラクシーニュースラジオの放送。その内容。

  『BOSから連絡が来たんだが、水の不正売買はやめるようにとのお達しだ』
  『俺もそう思うぜ。確かにそいつは価値がある。だがな、そいつは善意の水だ。そんなもんで金儲けしたって心が貧しくなるだけだぜ?』
  『俺たちは今、転換期にいる』
  『ここで変わらなきゃ今までみたく廃墟を彷徨う屑のままだ。目先の利益は確かにうまい、しかしだ、先のことを考えたら自分で自分の道を潰してるだけだぜ? 今すぐ、やめろ』
  『そうだよお前のことだよ、そこの犯罪者っ!』
  『聞いてくれて感謝するぜ。俺はスリードッグ、いやっほぉーっ! こちらはキャピタル・ウェイストランド解放放送、ギャラクシーニュースラジオだ。どんな辛い真実でも君にお伝えするぜ?』
  『さてここで曲を流そう。曲はInto Each Life Some Rain Must Fall』



  Into Each Life Some Rain Must Fall。
  その歌詞の内容。

  『誰の人生にも雨が降ることはある』
  『でも自分の人生はいつも雨ばかり』
  『誰の人生にも涙で心を濡らすことはある』
  『いつか晴れる日が来るだろう』

  『人は心の憂鬱を払うことが出来る』
  『でも自分が君のことを想うとまた雨が降り始める』
  『誰の人生にも雨が降ることはある』
  『でも自分の人生はいつも雨ばかり』


  『誰の人生にも雨が降ることはある』
  『でも私の人生はいつも、いつも雨ばかり』
  『誰の人生にも涙で心を濡らすことはある』
  『いつか晴れる日が来るでしょう』

  『人は心の憂鬱を払うことが出来る』
  『でも私があなたのことを想うとまた雨が降り始める』
  『誰の人生にも雨が降ることはある』
  『でも私の人生はいつも雨ばかり』


  『全てのあらゆる人々の人生には雨が降ることもある』
  『だがあまりにも多くの涙が降り注いだ』
  『誰でも人生、涙で心を濡らすこともある』
  『しかし太陽が輝く日が必ず来るのである』


  『人は心の憂鬱を払うことが出来る』
  『でも私があなたを想うとまた雨が降り始める』
  『誰の人生にも雨が降ることはある』
  『でも私の人生はいつも雨ばかり』





  俺とトロイは3日掛けてようやくジェファーソン記念館に到着した。
  旅はすんなりかって?
  結構難儀した。
  あの後。
  あの後、アンダーワールドを出たら更なる厄介が広がってた。ビッグタウン行きの給水隊が使ってたバラモンと、そのバラモンが曳く荷台、荷台の上に満載の木箱にはアクアキューラ
  がびっしりあった。自殺モドキしたグールの仲間たちの代物らしい。アンダーワールドの外回りの警備兵たちは動揺してた。
  それゃそうだろ。
  その不正売買のグール達も全員死んでた。
  警備主任のウィローというグールの女性曰く、見せびらかすように飲んでいきなり死んだらしい。
  どうやら完全にこいつらは毒入りだとは知らなかったようだ。
  さすがに給水キャラバンごと移動するのは余計な羽虫を寄せ付けかねない……レイダーのことだ……ので、途中までウィローさんたちが護衛してくれた。ビリーも途中までは一緒だった。
  丁度リンカーン記念館のハンニバルさんがリベットシティの何かのコレクションの譲渡を頼むらしく、部下引き連れて移動中に出くわした。
  ハンニバルさんとは面識がある。
  レイブンロック前であった。
  面識と言ってもお互いに簡単な自己紹介、要は名乗っただけなんだけどな。
  事情を説明。
  ウィローさんも説明してくれた。
  ハンニバルさんは俺が優等生の仲間だからか、進んで協力を申し出てくれた。
  優等生の影響力、侮れんぜー。
  ここでアンダーワールドの警備隊と別れ、リベットまではハンニバルさんたちと同道。
  ビリーは途中でメガトンに向かったけどな。
  かなりの大所帯になったから、途中でレイダーがこちらを遠巻きに見てはいたものの、向こうはこちらを恐れて手を出してこなかった。お蔭で楽にシェファー孫記念館まで着いた。
  ああ、ハンニバルさんたちはリベットで別れたけど、そこからはわりと治安的に整備されてるから問題はなかった。
  PIPBOYから流れる曲が旅の疲れを紛らわしてくれた。
  「ご苦労様」
  今、俺たちはジェファーソン記念館前にいる。
  BOSのパワーアーマー兵士2人が入り口前に立っており、俺たちを労ってくれた。記念館の周囲一帯はBOSが現在完全に掌握してて、部隊がそこらに展開してる。近付くにつれて減ってはいた
  ものの、無謀にも水を奪取しようと突撃してきたレイダーたちの死体がごろごろと転がってた。さすがに喧嘩する相手間違ってんだろ。
  兵士の1人がバラモンを曳いていく。
  水の検査をするために倉庫にでも連れて行くんだろう。それか、施設内に運ぶための搬入口あたりに。
  さて、俺の役目はお終いだ。
  「兄貴、どうしますか?」
  「帰ろうぜ」
  「まあ、待ちたまえ。君達にも話が聞きたい。何があったのかを詳細に」
  残りのBOSに押し留められる。
  まあ、構わんけど。
  「Dr.爺ちゃんもここにいるとか言ってたし、会っていくかな。元気なのか?」
  「誰だねそれは?」
  ああ。
  愛称で呼んじまった。全部終わった後に親しくなった、博士の愛称だ。
  「Dr.ピンカートンだよ」
  「そいつは、面白いあだ名だな。いるよ、彼がここの責任者だ。奥の部屋にいる。誘導は中の兵士がしてくれる」
  「ありがとな」





  キャピタル・ウェイストランド。
  荒野。
  砂風吹き荒ぶ大地を歩く集団がいた。街道は歩かず、残骸と廃墟が横たわる荒野を歩く者たち。
  それは西からの来訪者。
  数は8人。
  先頭を歩くのはバンダナを巻いた白人。革製の茶色を基調としているレザーアーマー。両肩の金属製の肩当には赤いインクで×マーク。腰にはマチェット。銃は帯びていない。
  西のあるモハビの住人ならすぐに恐怖するだろう、その男、リージョンの兵士。
  正確には元兵士。
  リージョン、それはコロラド川東部の全ての部族を統括し、一大帝国を築き上げたシーザー率いる武装集団。
  現在はモハビ・ウェイストランドに軍を進め、同じく勢力拡大にモハビに進出してきたNCRと一進一退の戦いを繰り広げていた。NCRは自分たちの法律でモハビを支配しようとしていた
  が、リージョンは暴力と殺人で統制しようとしている。そしてそのやり方は残酷そのものであり、誰もが怖れていた。
  レイダー風の男が元兵士に声を掛ける。
  「嘘じゃないって、マチェット。見たんだよ、あの弱虫野郎を」
  「ほう? そいつは楽しくなってきた、ローチキング」
  マチェット、リージョン元兵士の名前というよりもコードネームのようなもの。ローチキングもまた然り。もっと正確に言うならそれぞれの能力を象徴している、名前だった。
  彼ら彼女らは傭兵集団ストレンジャー。
  異能の力で各地を荒らし回っている悪名高い集団。
  マチェットは本隊所属で各地方で暴れまくり、ローチキングは地方所属で、キャピタルを根城にしている。自分の都合で依頼を受けたり暴れたりするが、本隊が来た時には無条件で参加が
  義務付けられている。ローチキングは本隊到着の為の出迎えの為にマチェット達と合流した。そしてもう一人、キャピタルを根城にしている男が口を開く。
  この男は一般の入植者が好んで着ている白いバラモンスキンの服を着た金髪の白人男性。
  腰にはレンチ。
  一見すると一般人だが、れっきとしたストレンジャーの一員だった。
  ハイウェイマン、そう仲間内では呼ばれている。
  「マチェット、ボマーはどうしたんだい?」
  「ボスはまだ来てない。俺たちは先行してきたのさ。なあ?」
  「キャピタルのおクスリは楽しみだよ、ウルトラジェットとかがあるってーっ!」
  「……お前の趣味の為に来てるんじゃないんだぜ、ドラッグ・クイーン。……それよりもローチキング、本当なんだな、あの弱虫野郎がいるって」
  「ああ。粋がってたけどな、おどおどしてる内面は隠せてないぜ。どうする?」
  「ボスが来るまで暇だからな。同窓会でもするとしようぜ」


  傭兵集団ストレンジャー、キャピタル入り。